ひろしまデザインびと n-2
Hiroshima Designer / creator 地域デザイン研究所 2021.04.22 Thu
ANCHOR'S
LOCAL DESIGN LABO
地域デザイン研究所
先日のペンギングラフィックスへ訪問したとき、奥様から
納島さんとこは行ったの?と聞かれて、なんでも市立大学内の
教授部屋がすごくよかったと 写真を見せてもらった。
納島さんといえば 牛田の事務所も移転して、昨年から市立大学の
芸術学部デザイン工芸学科の教授になられた。
一昨年は私も同学科を見学させてもらったけど、まぁ以前のように
おいそれとは行かれないなぁ〜と思っていたので、
これはさっそくアポとって再会。
vcd.art.hiroshima-cu.ac.jp
教授部屋といっても、完全に納島さんのデザイン事務所状態. 笑
インテリアもすべて私物だとか。
この大きなポスターを見ると、あの寺町のROCKETSを思い出す。
どことなく納島さんを象徴するかのような、メトロポリス。
これまた彼らしい、ベースと渋い防湿庫が違和感なく鎮座. 笑
御大自らじっくりと、美味しい珈琲を淹れていただく。
ご無沙汰でした。やはりここは教授と呼ぶべきでしょうか. 笑
昨年は「 地域デザイン研究所 」代表を清水さんへ継承し、市立大学へ。
同時にコロナ禍で就任早々、リモート授業と まさに目紛しい
たいへんな 1年だったらしい。
さて さっそくながら教授を質問攻め. 笑 昨年から近況までを
話されたけど、やはりこれからのグラフィックデザイナーって
どうなる? どうあるべきか、聞いてみたかった。
コロナ禍で広告業も、特にイベントや印刷媒体を主とする仕事は
とても厳しいと思う。先日のPG中村さんからもペーパーレスの
話が出たように、コロナが落ち着いてもこの流れは変わらないだろう。
なんせ凸版がTV CM 出す時代だからね、うちは印刷だけじゃねぇって. 笑
それはローカルな印刷屋でも同じことだ(昔、印刷屋と呼ぶと怒る
印刷会社の社長がいたなぁ. 笑)すでに印刷だけでなく 企画からデザイン、
IT 関連にまでこなし、ブランディングを軸にシフトしている。
また世間やクライアントから デザインが大事、ブランディングが
重要と やたら言われるようになったけど、その反面、
デザイン業における対価は、確実に下がっている気がする。
理由はわからなくもない、でもなんか腑に落ちないのよね。
印刷やデザインの需要が減っても、WEB制作や IT関連はずっと
右肩上がりで伸びている。アイエーアイ(株)藤本くんも昨年は
多忙極まり、個人事務所を会社にしてスタッフを増やした。
そんな時代に納島さんは、
未来のデザイナーを育てる仕事に就いた。それは今まで続けてきた、
安田女子大学や穴吹デザイン専門学校での講師とは、
一線を画すのだろう。彼が言っていたのは
「 これからのデザイナーは、デザインしかできないではダメだろう。
そこに関わる、いろんな仕事もできるようにする。
そのためには 知識が必要。」
自分の会社を譲り、安田も辞めて教育にかける。
還暦に決意した航海はスタートから荒波だけど、楽しみしかない。
今は手探りでも、前へ進むしかないじゃろ!と言ってたけど
その割には来年かな? 大きなネタを仕込んでいて ワクワクしてた。
やっぱり彼は生粋のグラフィックデザイナーだった. 笑
教授になったとはいえ、いつまでもプレイヤーであるために。
講義の告知 PRポスターを週に1枚、デザインすることを
自らに課した。この「 原始のデザイン的行為 」が 1枚目で
入り口に貼リだし生徒にアピール。
1年生の講義、デザイン概論のカリキュラム。
このポスターは「 ルネッサンス、ダヴィンチの時代 」へと。
そして「 ウイリアムモリス、アーツアンドクラフト運動 」へ、
どちらかというと世界史の講義みたいね. 笑
週に1枚と言いつつも、すでに次の「 アールヌーヴォー 」そのまた
次の「 アールデコ 」まで、デザインはもうできているらしい。
仕事でもなんでも、やると決めたら めちゃ早いのは相変らずだ。笑
ここで話を聞いていると、気がつけば講義を受けているようだ。
しかもタダで. 笑 納島さんとサシで話すのは、
ほんと勉強になる。
部屋の窓際には、とても有機的なフォルムのアクアリウムが
目を引く。納島さんが仕込んだもので、バランスがよく
いい感じに安定している。グリーンの配置がさすがですね。
こうしてアクアリウムの話を 2人でしていると、もう 12年前に
ボトルビオトープの販売用 ラベルデザインをしてもらったの、
思い出す。私ではまずできない、ベーシックで秀逸なデザインを
なんか簡単にしちゃうのよ。
なんてゆうか作業時間のかかる、緻密で途方もないデザインでは
ないけど、Macを触れば いつの間にか組んじゃってたような. 笑
そんな絶妙なバランス感覚でデザインができる人。
じゃないかなって推測する. 笑
そんなこんなでこの、お土産のペットボトル・ビオトープも
センスのいいボトルに 替えてくれるそうだ。
ここでおもむろに、懐かしいフィルム一眼レフを出してきた。
フィルムカメラの名機、Nikon F。なんとあの
縄田先生の形見らしい。亡くなる少し前に頂いたとか。
シャッターも非常にキレがよく、先生が大事にしてたのがわかる。
先日モノクロで撮影する機会があり、そうなるとついつい
カメラ談義に突入する。以前から何度話しても
彼のカメラネタは楽しくて尽きない。
やはり納島さんといえばライカやコンタックス、ローライといった
クラシックカメラだろう。とても手の届かない、気難しい名機たち。
他にも珍しいクラシックカメラのコレクションも多数あり、
またその知識も豊富だ。
一緒に撮影とか同行させてもらったりしてたなぁ。
デザインを語る納島さんもいいが、カメラや趣味の話をしている時の
表情は、60過ぎても昔のまんまだった。
ビートルズをこよなく愛し、ベースギターを続けている。
フライフィッシングもタイイングからこなし、古いキャンプ道具を
積んで一人で山へ入る。
どの小物ひとつとっても、その意匠へのこだわりに妥協がない。
センスのいい生きかた = 彼のライフワークそのものがすべて
デザインとリンクしているんだろう。
これまた古いけど美品のコンタックス2を出してきた。
撮影までの儀式が必要だが、ピント合わせがとても正確できれい。
説明を聞きながら丁寧に触れて、シャッターを切らせてもらう。
ネズミ鳴きという聞いたことのないチープな音で、時を写す。
う〜ん、このままだと中村さんのときのように、
3時間居そうになったので. 笑 ここいらで おいとましよう。